二〇〇八年十二月 |
三ケ日の甘き蜜柑の届く朝
|
遠き日の蜜柑狩ふと蜜柑来る
|
来る年を迎へんとして畳替
|
畳替すませて部屋の広くなり
|
畳替して柔らかき日差かな
|
東京は銀杏黄葉の似合う街
|
冬晴れて関東平野山いくつ
|
冬晴れてほんに徳島川の町
|
ゴーギャンもゴッホも来ませ銀杏散る
|
ゴッホならどう描くこの黄銀杏散る
|
日に映えて銀杏黄葉のいよいよに
|
大銀杏散りて野の宮埋め尽くす
|
大銀杏黄葉の空の青さかな
|
落雷の傷跡あらは銀杏散る
|
野の宮を金色に染め銀杏散る
|
仰ぎゐて銀杏黄葉と空の青
|
木星と金星の間冬の月
|
松手入すませ義士祭待つばかり
|
義士の墓線香絶えず寺師走
|
寺中に提灯連ね義士の日の
|
義士祭へ高校生も線香持ち
|
義士祭の塩饅頭のよく売れて
|
義士祭や饅頭の塩効きのよき
|
線香の煙師走の泉岳寺
|
烈士みな我より若し義士祀る
|
享年を墓に確かめ義士祀る
|
そのかみのこと今にして義士の日や
|
彩りの中の彩り冬薔薇
|
彩りの失せし公園冬薔薇
|
公園の一隅凛と冬薔薇
|
野兎の足跡らしきくっきりと
|
野兎一羽発破に気絶せしと云ふ
|
フレームの小窓双葉の青の濃き
|
初氷踏みて幼なに戻りけり
|
狩人の老い狩犬も老いにけり
|
健康のことを考え根深汁
|
健康と云へば健康根深汁
|
余生なる言葉うべなひ根深汁
|
深谷葱深谷の匂ひしたたれり
|
フレームに京の壬生菜の育つ阿波
|
フレームの野菜信州信濃へと
|
愛車をば始動点検霜の朝
|
霜の朝愛車の霜を拭いてより
|
裏返し五指を広げて足袋を干す
|
自分から自分へ賞与する齢
|
年毎に年毎速く賀状書く
|
献血の一役サンタ罷り出て
|
帆といふ帆イルミネーション川師走
|
|