二〇〇七年十二月 |
小春日の野点の席に招かれて
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比叡山紅葉明かりの山の宿
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山荘の朝はきりりと冬紅葉
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帰途に着く羊の群れに空っ風
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一つ市にアジア欧州冬の月
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冬紅葉イスタンブール坂多し
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ボスフォラス早暁の海鳥渡る
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海峡を行く船遅し冬の朝
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欧州の隣はアジア冬霞
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二大陸分かつ海峡冬霞
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二大陸指呼の間にして冬霞
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冬明り地下宮殿の水面にも
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空港の吹き抜けロビー大聖樹
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漆黒の海に浦の灯冬の月
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鳴き砂の浜の千鳥の細き足
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とある川河口の中洲群千鳥
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磯千鳥四国三郎暮れんとす
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年忘傘寿と喜寿のデュエットで
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年忘裕次郎出てお開きに
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クリスマスピアノ調律師を待って
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二次会の声のかからぬ年忘
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年忘日本酒党またビール党
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一日で終らぬ仕事障子貼り
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おでん鍋阿波に竹輪麩無かりけり
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大鍋におでん煮てあり妻の留守
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炊き足しのおでん大根よく滲みて
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熱々の大風呂吹と格闘す
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宗教を信じ戦い枯蓮田
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枯蓮田抜け行く風の白さかな
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単線の列車一両蓮田枯れ
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蓮枯れて天地の広くなりにけり
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一人より二人の仕事年用意
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調子出たところで障子貼り終る
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アイロンで障子貼りする時世かな
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障子貼り終へ大の字となってゐる
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鴨飛翔つんのめるほど首立てて
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山中の池ホバリングする野鴨
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ホバリングしてゐる沼の鴨の尻
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左手でひょいひょいひょいと大根抜く
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村中の家の総出に大根引く
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枯れゐると思へど青し破れ傘
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破れ傘冬青々とありにけり
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餅搗を見てゐて餅を馳走さる
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餅搗にあり落ち着きしリズムかな
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掌に取れば崩れて初氷
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