私は、今、オバマ米新大統領の就任演説の草稿全文を読んでいます。200万人もの人々が氷点下の寒天の下、何時間もじっと待ち続けて聴いた演説を暖かい部屋で読ませてもらっています。
全文は「恐れでなく希望を選んだ」「立ち上がり、再建しよう」「イラク撤退、温暖化防ぐ」「新時代への責任を」の4章節からなっていますが、読むほどに感動が込み上げてきます。私なりに共感した部分を以下に要約して列挙してみます。
「全米で自信が失われ、アメリカの没落は必然で、次の世代は多くを望めない、という恐れがまん延している。だが、アメリカは克服する。恐れではなく、希望を選んだ。争いの代わりに団結を選んだのだ」
「アメリカの偉大さは与えられたものではない。自分で手に入れたものだ。我々は今でも地上で最も繁栄し強力な国だ。だが、過去に固執し、狭い利益しか守らず、面倒な決定は後回しにする時代は終わった。今日からは、立ち上がり、ほこりを払い、再建の仕事に取りかかろう」
「市場が正しいか悪いかも、我々にとっての問題ではない。富を生み出し、自由を拡大する市場の力は比肩するものがない。だが、今回の金融危機は、注意深い監視がなされなければ、市場は制御不可能になり、豊かな者のみを優遇する国は長く繁栄することはできないことを我々に気付かせた」
「先人がミサイルや戦車を使うのみならず、信念と確固たる同盟を持ってファシズムや共産主義に勇敢に立ち向かったことを思い出そう。先人は軍事力だけが我々を守るのではないことや、またそれを好き勝手に使えないことを知っていた」
「我々はこの遺産を引き継ぐ。我々は責任を持ってイラクから撤退し始め、イラク人に国を任せる。そしてアフガンでの平和を取り戻す。核の脅威を減らすために努力し、地球の温暖化とも戦う」
「新しい責務を果たすべき時代だ。米国人一人ひとりが自分自身や国家や世界に義務を負っていることを認識し、こうした義務を嫌々ではなく、喜んで受け入れることだ。困難な仕事に全力で立ち向かうことほど、精神を満たすものはない。これが私たちの自信の源泉だ」
「なぜ男性も女性も子供たちも、人種や宗教を超えて就任式に集ることができるのか。なぜ60年前は地方のレストランで差別された父親の息子が、皆さんの前で宣誓式に臨むことができるのか。これこそが我々の自由、我々の信条の意味なのだ」
「アメリカはかつて建国の父たちがしたように、希望と美徳を持ってこの氷のように冷たい流れに勇敢に立ち向かおう。そしてどんな嵐が来ようとも耐えよう」
「将来、我々の子孫に言われるようにしよう。試練に立たされたときに我々は旅を終わらせることを拒み、たじろぐことも後戻りすることもしなかったということを。自由という偉大な贈り物を前に送り出し、それを次世代に無事に届けたのだ、ということを」
わずか18分の演説と聞いていますが、本当に中身の濃い、格調の高い名演説であったと私は思います。それにしても日本の政治家の演説の何とお粗末であることでしょうか。心を揺さぶる政治家のいないことを嘆くばかりです。
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